ダイヤモンドの性質(1)硬さ・靭性・へき開性
最も硬い宝石“ダイヤモンド”
自然界が生み出した“最硬度”の鉱物。
「DIAMOND(ダイヤモンド)」は、ギリシャ語の「アダマス(ADAMAS)」が語源で“侵しえぬ”、“屈服されない”という意味をもちます。和名では、「金剛石」という名が付けられています。(金剛とは強固な硬さのものを意味する)
その語源のとおり、宝石の中でもダイヤモンドは10段階のモース硬度(※1)で最高の硬さをもつ天然石(鉱物)です。現在、地球上の自然界に存在する物質で、ダイヤモンドを越える高い硬度をもった物質は発見されていません。
この硬さは、ほかの宝石や鉄などの金属類を一方的に傷つけてしまう危険性があるほどです。
ダイヤモンドを傷つけられるのは同じ硬さをもつダイヤモンドだけであり、まさに“宝石の王”と呼ばれるのにふさわしい、孤高の気高さをもった天然石と言えるのではないでしょうか。
(※1)モース硬度とは
AとBの鉱物(天然石)があったとし、その2つを互いにこすり合わせ、傷ついたほうがBであった場合、硬さはBの鉱物よりAの鉱物が優れていることになります。このようにモース硬度は、異なる鉱物同士をこすりあわせてその硬さを判断する、単純かつ基本的な方法です。
なんらかの衝撃や圧力を加えて判断した結果ではないので、あくまで、他の物質に接触した際の“摩擦やひっかき傷に対する強さ”の指標をあらわします。
▲大まかなモース硬度表です
“硬いが脆い”ダイヤモンドの弱点
「硬い=割れにくい」ではない。
上記で述べたようにダイヤモンドは最硬度を誇る天然鉱物です。
それならばダイヤモンドは、絶対に割れない、砕けないのか?というと残念ながらそうではありません。衝撃の与え方次第では、いとも容易く割れてしまう脆さがあるのです。
耐衝撃性“靭性”は、それ程高くない。
モース硬度の最高値10を示すダイヤモンドですが、これは単純に鉱物同士をこすり合わせてその硬さを判断する基準であり、“引っかき強度に対する抵抗力の強さ”です。
例えば、ルビーとダイヤをこすり合わせると一方的にルビーに傷がつきますが、ハンマーなどで叩かれる衝撃には、ルビーの方がダイヤモンドより耐える強さ「靭性(じんせい)」があります。
靭性とは、物質の粘り強さ、激しい衝撃に対する欠けや割れにくさのことで、ダイヤモンドの靭性の強さは水晶と同じ「7.5」。これは金槌などで勢いよく叩きつけると粉々に砕けてしまう程度の数値になります。一見、「硬いものは砕けにくい」と思いがちですが“硬さ”と“砕けにくさ”この二つは全く別の特性なのです。
へき開性により簡単に砕けてしまう脆さも。
さらに、ダイヤモンドは“へき開(壁開)”という原子の結びつきの弱い面に沿って割れる性質があります。簡単に言えば、「ある特定の決まった方向から衝撃を与えると非常に割れやすい」ということです。これは、原子が規則的に並んだ結晶で出来ている鉱物にのみ起こる現象でもあります。
これらのことから、ダイヤモンドは極めて硬く傷付きにくい宝石ですが、特定の衝撃には非常に脆い面があり、落としたりぶつけたりすると欠けたり割れたりする可能性もあるので、取り扱いには注意が必要であると言えます。
ダイヤの輝きを生み出すカット加工は、へき開性を利用して行われる。
このへき開性や靱性がダイヤモンドの弱点といえるかもしれません。しかしながら、へき開の性質を利用するからこそ、最硬度を誇るダイヤモンドをダイヤモンド粉末によってカッティングすることが可能なのです。
もしも、ダイヤモンドにへき開性がなければカット加工が施されず、“地球上で最も硬い石”というだけのまま、美しい輝きを放つ価値ある宝石として存在することはなかったことでしょう。
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